例えば、会話していて相手に伝えたくないことがあるとする。その物事が、二次元の丸い形、例えば美味しいパン屋で売られている楕円形のカンパーニュのような形をしているとしよう。それでもその話題になったので、会話を続けなければならず、渋々言葉を選んで伝えなければいけない。その楕円形のカンパーニュのような形から言葉を選び、半分にカットして、左半分のことを伝えたとする。ぼくは、右半分がどのような形なのか色をしているのか、あるいは味をしているのか、もしくはその楕円形のカンパーニュ全体の形や色やサイズを伝えたくないと思っている。しかし、それを聞いた相手は、その半分に切られた楕円形のカンパーニュのような形から、左半分だけを受け取ったのちに、楕円形のカンパーニュ全体を想像することができる。時に形だけではなく色や味までを具体的にだ。ましてや、受け取り手に持っているはずの左半分の楕円形のカンパーニュの実体ではなく、伝えていないはずの右半分の楕円形のカンパーニュの形や色、味「だけ」を手に取るように理解することもある。本来ある楕円形のカンパーニュの左側「だけ」を渡そうとするあまりにもう半分の形が、実体以上に伝わってしまうことがある。隠すことや欠落している状態というのは時に人の想像力を無限に掻き立ててしまい、本当の理解を生むことがあるというような経験をした日。