2100年の生活学 by JUN IWASAKI : 2025.6.14

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2025.6.14

夕暮れ、海までサンセットを見に行った。風は強かったが、ぼくたちは根が生えたかのようにビーチに腰を下ろした。
イヤホンからはThe Beach Boysが、
So hard to answer future's riddle
When ahead is seeming so far behind
So hard to laugh a child-like giggle
When the tears start to torture my mind
So hard to shed the life of before
To let my soul automatically soar
と歌い出した。その次に流れたI can hear the music』に合わせて今日の太陽が海にしずんだ。陽を失い辺りが青く暗くなり始めた街を家に向かって自転車を漕いでいた。Bobby Darinの『Beyond the sea』が流れた。そのまま家に帰れるような気がしなかった。この感情をどこにやればいいのだろうか。そんな生真面目な性格のせいだったのか、ぼくは気付けばBowieのテラスに座って街の一角を眺めていた。
セントラルへ急ぐ若者も、子育てを終えた年頃のディナー帰りの3人組の若さを忘れないよう心がけている女性たちも、孤独を夜の空気に溶かそうとする老人も、みんなぼくの目の前を通り
過ぎた。The Beach Boysがいなければぼくたちは海からこれほどの情景を見つけることもないし、Edward Hopperがいなければ、街の孤独を美しいとは思わなかっただろう。

世界が美しいのは、単に世界自体が美しいからではなく、世界の見方を提示している芸術家が数々の音楽と絵画、物語によって海を語り、孤独の夜を語り、世界そのものを語ってきいるからなのだと思う。何も恐れずにいうとThe Beach Boysがいなければぼくの目の前に海など存在しないようなものなのだ。