来月に始まる2つの展示がある。一つは念願のパリのグループ展で、もう一つは東京で『A Song from the Laundry Room』のシリーズの本の展示。
そのために文章を推敲しているが、なかなか落とし所が見つからない。それでも毎日同じように向かい合うことでしか触れることができないところに美味しい実があることがわかっている。
集中しているとどうも知人友人との時間の約束などには間に合わなくなり、時間をずらしてもらって近くに住むアヤさんとお茶。ステラもぼくとだけいてもつまらないようで、アヤさんにあえて飛び上がるようにとても嬉しそうだった。ぼくの友人を彼女自身も友達だと認識しているようで、それは飼い主として嬉しい。
ステラと一人+一匹で生活していると、ぼくがステラの人生の全てを抱えているようで責任を強く感じる。人間に対しては、例えばガールフレンドやパートナー、夫、妻などであれば、自分が責任を感じつつも、彼ら彼女らにも自分で楽しむことができるし、自分の一喜一憂が彼ら彼女たちにとっての全てではないこと知っているが、犬となるとまた話が違ってくる。もちろん、飼い主に従順でいることは犬の生きる上での喜びであるだろうが、彼女の楽しみの多くは、外で走り回ることだったり、穏やかな気持ちで日向でゴロンと太陽を浴びることだったり、食事をすることだったり、時々散歩中に会える友達との数秒の近況報告だったりするのだが、それらの多くがぼくによって支配されてしまっているのかと思うと涙が出そうになる。一人でふらっとカフェに行くことも友人に会うことも、美術館とかギャラリーに行くことも、ましてや思いついたように何気なく物想いに耽った散歩をすることさえもできない。人間であれば、いやぼくの人生の大きな悦びは、カフェだろうが散歩中だろうが物想いに耽ることであるが、彼女はそれさえもできない。自分が何のために生まれてきたと考えているのだろうか。山で猟をしていたら迷子になり、心のある女性にレスキューされ、東京から突然来た未熟なカップルに迎え入れられ、大雪の中東京に到着し、細やかな配慮があるこぢんまりとした2階建てのアパートでの生活が始まった。森と都市とのギャップに慣れないままに、また新しい場所、京都へ引っ越し、あっという間に気付けば飛行機に乗って全く違う香りのする大陸に来た。犬は未来から来たのだという人もいるが、彼女はぼくたちの生活を知っているかのようにできごとにうまく対処し、時にこの後起きることを知ったように杞憂な表情を見せる。「自分にとって何か新しいものと対峙した時に自分が何を感じ取れるか、受け取れるかを知ることを人生の醍醐味とするような生活を送る人もいるのだから、犬の生活もそれによって何かを感じたり、学んだりするというのは、何とも比較できないかけがえのないものなんだよ。」と思いながら、ふと横に目をやると、来客用だったはずのエアベッドを独占したステラは、カーテンのない窓からの太陽の光を充分に浴び、大股を広げ、腹を丸出しに寝転んで目を瞑りながらピンクの唇を緩めている。ぼくの杞憂も彼女に対する申し訳ない気持ちさえも全く気にも留めていない。「ステラに論語」
そのために文章を推敲しているが、なかなか落とし所が見つからない。それでも毎日同じように向かい合うことでしか触れることができないところに美味しい実があることがわかっている。
集中しているとどうも知人友人との時間の約束などには間に合わなくなり、時間をずらしてもらって近くに住むアヤさんとお茶。ステラもぼくとだけいてもつまらないようで、アヤさんにあえて飛び上がるようにとても嬉しそうだった。ぼくの友人を彼女自身も友達だと認識しているようで、それは飼い主として嬉しい。
ステラと一人+一匹で生活していると、ぼくがステラの人生の全てを抱えているようで責任を強く感じる。人間に対しては、例えばガールフレンドやパートナー、夫、妻などであれば、自分が責任を感じつつも、彼ら彼女らにも自分で楽しむことができるし、自分の一喜一憂が彼ら彼女たちにとっての全てではないこと知っているが、犬となるとまた話が違ってくる。もちろん、飼い主に従順でいることは犬の生きる上での喜びであるだろうが、彼女の楽しみの多くは、外で走り回ることだったり、穏やかな気持ちで日向でゴロンと太陽を浴びることだったり、食事をすることだったり、時々散歩中に会える友達との数秒の近況報告だったりするのだが、それらの多くがぼくによって支配されてしまっているのかと思うと涙が出そうになる。一人でふらっとカフェに行くことも友人に会うことも、美術館とかギャラリーに行くことも、ましてや思いついたように何気なく物想いに耽った散歩をすることさえもできない。人間であれば、いやぼくの人生の大きな悦びは、カフェだろうが散歩中だろうが物想いに耽ることであるが、彼女はそれさえもできない。自分が何のために生まれてきたと考えているのだろうか。山で猟をしていたら迷子になり、心のある女性にレスキューされ、東京から突然来た未熟なカップルに迎え入れられ、大雪の中東京に到着し、細やかな配慮があるこぢんまりとした2階建てのアパートでの生活が始まった。森と都市とのギャップに慣れないままに、また新しい場所、京都へ引っ越し、あっという間に気付けば飛行機に乗って全く違う香りのする大陸に来た。犬は未来から来たのだという人もいるが、彼女はぼくたちの生活を知っているかのようにできごとにうまく対処し、時にこの後起きることを知ったように杞憂な表情を見せる。「自分にとって何か新しいものと対峙した時に自分が何を感じ取れるか、受け取れるかを知ることを人生の醍醐味とするような生活を送る人もいるのだから、犬の生活もそれによって何かを感じたり、学んだりするというのは、何とも比較できないかけがえのないものなんだよ。」と思いながら、ふと横に目をやると、来客用だったはずのエアベッドを独占したステラは、カーテンのない窓からの太陽の光を充分に浴び、大股を広げ、腹を丸出しに寝転んで目を瞑りながらピンクの唇を緩めている。ぼくの杞憂も彼女に対する申し訳ない気持ちさえも全く気にも留めていない。「ステラに論語」