2100年の生活学 by JUN IWASAKI : 2024.9.4

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2024.9.4

朝4時に起床しロンドンに向かう。7時のSchiphol Airport発、Gatwick Airportに7時15分着。Gatwickからロンドン市内へ向かう電車の中で、The Royal Balletのスウェットを着たとても美しい少女がお父さんと一緒に座っていた。日本を思い出すような満員電車の中で聖子ちゃんと「天使のようだね」と話していると、どこかの駅で乗り込んできた40代後半もしくは50代前半のいかにも会社員というきちんとしたスーツを着た男性がiPhoneで美しい少女の写真を撮り始めた。はずかしながらThe Royal Balletを知らなかったぼくは彼女がもしくはThe Royal Ballet写真に撮られるほど有名なのかとThe Royal Balletに興味を持ち始めていたが、いやでも目に入る距離にある彼のiPhoneの画面を見ていると、お父さんを中心の構図で写真を撮っている。異国であることをいいことに聖子ちゃんに「この人、写真撮ってるよ、女の子じゃなくてお父さんの」と伝えた。エスペラント語のように世界の満員電車はどこも変わらず同じ言語をもち、嫌な空気が充満する満員電車の中で目の前にある他人のiphoneのモニターは時間を潰すのにはもってこいだったし、イギリス人がどんな風に英文を打ち込み、考え直して消すのか、そして、どんな風に書き直すのかは、英語日ネイティブのぼくからすると英語の勉強のようでとても興味深かった、それは良くも悪くも実際に勉強になった。彼は、その写真を友人たちに送り始めた「Guess who I am taking a train with this morning」さらにヒントとして、「Crystal Palace戦でゴールを決めた奴だよ…」と、最後の...で彼がCrystal Palaceファンであり、当のお父さんはライバルチームBrighton & Hove Albionの選手だということが想像ついた。チャットの中に名前が出てきて、結局ぼくはその選手のことをしらなかったので、その途端に興味は失われた。アルチームのレジェンドよりもThe Royal Balletよりも美しい少女にしか興味がいかなかったことから、知識がないと即物的なものにしか興味が持てないということをまた表現しているようだった。彼は友人たちとのチャットを楽しみながら、その元サッカー選手が持っている娘のボストンバッグのブランドの検索をし、The Royal balletの学費を調べ出した。彼は彼自身の好奇心のままにiphoneの画面を誰も見ていないという幻想を抱き、思いのままに操作している。ぼくはiPhoneの画面を見ながら彼の脳を覗いているような気になってきて、それを見ている罪悪感以上に、自分もある場面ではこんな風に人について調べたりしていないだろうかと思うと、そんな風にはなりたくないなとゾッとしてしまい焦って自分の目を閉じた。
Emileの父の家に行き、久しぶりにHarryに再会。娘のIdaにもやっと会えた。今回、ぼくたちがロンドンに来たのは、HaryyEmileとしてIdaに会うことが目的で他には特に予定がなかった。New Zealandから来ているということで、ここでしか会うことができなかった。2018年以降会っていなかったが、久しぶりに会ったとは思えないような気分で、あたかも先週一緒に家でお茶でもしていたかのように会話が始まった。しかし、同時に6年の間に彼女の生活には大きな変化があり、ぼくの人生にも大きな変化があった。20代や30代というのは自分自身の環境の変化があり、自身の人生の方向を決める大きな舵取りが必要な気がするし、その舵をどう取るかによっては知り合う人や遊ぶ人も変わってしまうことがある。6年も会っていない間に人々の人生は劇的にではなく枯れた土地に水が染み込み色を変えていくようにじわじわと変化していくのだろう。そのゆったりとした変化は大きな時間を見返した時に劇的にさえ見える変化を生み出しているかもしれない。こうやって頻繁には会えないけれど、定期的に会える友人がいることを嬉しく思うし、それは意思を持って行動している人にしか訪れないようなモーメントなのだと思った。何気ない再会ではあるのだが、一つの土地にいるだけでは決して訪れることのない素晴らしい出来事である。何気ないことの裏側には人々の度胸があることもある。家の辺りを散策し、13時過ぎに家を出てロンドンセントラルへ出た。Cafe Decoで一服し、Tateの常設を見て、夜は前にVeronicaに連れて行ってもらったレストランToklasに行き、Somerset Houseの横を通り、歩いてWaterloo Bridgeを渡り、バスで帰宅。聖子ちゃんと一緒にロンドンに来たのも2014年ぶりである。あれからもう10年もの時間が経った。