2100年の生活学 by JUN IWASAKI : 2024.8.28

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2024.8.28

朝は、辻村さんと聖子ちゃんと家で食事。Pompernikkelで辻村さんのクロワッサンも買ってきたが、動物性の食べ物をあまり摂らない彼に「お酒を飲まない人にまあ1杯くらいどうと、グラスにワインを注ぐのと同じではないですか?」と言われ、ドキッとした。良かれと思っていることも相手にとっては気を遣わせることになっている。「お酒まあ1杯くらいどう?」みたいなのにくたびれている自分がいるにも関わらず、それでも自分はクロワッサンを動物性の食べ物を摂らない人に買ってきて朝食のテーブルに並べているのだ。昨晩は寝れなかったと言いながらクロワッサンをちぎりながら食べ、コーヒーを飲み干し、しばらくして辻村さんは家を出た。滞在中も東京にいる時と変わらず忙しそうである。
今日で、聖子ちゃんと付き合って12年がたった。8月28日は結婚記念日ではないし、入籍日でもない、ぼくが好きな音楽家であり写真家でもあるSteve Hiettの命日であるが、この日はぼくと聖子ちゃんにとっては大切な日である。あの2012年以降、8月の後半はいつだってぼくをエモーショナルにさせる。2012年の暑い夏の日々も鮮明に思い出せる。鴨川で寝ていたぼくは、大した荷物も持たず、ましてやコンタクトも持っていなかったが京都駅の窓口へいき、東京行きのチケットを2枚買った。仕事に向かおうとしていた聖子ちゃんを無理矢理東京にまで連れ出した。あれほど勢いを持った暑い夏をもう2度と経験することはないかもしれない。東京から帰って付き合ってもいなかった彼女にメルボルン行きの片道チケットを勝手に買い渡したのが8月28日、9月1日にぼくは一人でフィジーへ飛び立った。マルセル・モースの『贈与論』に異常なまでに魅了されていた。12年後の同じ日にデン・ハーグに住んでいるとは考えもしなかった。今日は、気温は28度まで上昇したが日本やアジアのそれとは違い特別暑すぎもなく、カラッとして夏の終わりを楽しませてくれるような気温だった。Nanni Moretti『Dear Diary』を鑑賞して、夕方からビーチに行き、家に帰りシャワーを浴びて19時からRestaurant ñへ。ビーチで少し泳いで、シャワーを浴びてシティセントラルにあるテラスの気持ち良いレストランでディナー、ビーチ沿いの道でPompernikkelのDaanとすれ違い「Heey!」とだけ言葉を交わした。そんな風な時間を過ごすとこの土地で生活しているなと実感して嬉しくなった。デン・ハーグに来てから、夜に食事に行くことがめっきり少なくなってしまってこんな風な時間がこの街にも流れていることをすっかりと忘れていた。
家で辻村さんと話していると、昨晩寝れなかったのは昨夜のリリ世ちゃんが作ってくれた食事にガーリックが入っていてそれを食べたせいだといっていた。吸血鬼ドラキュラはガーリックが苦手だが、辻村さんもその類だろうか。イタリアの壁のシリーズの作品をYvon Lambertに送らないといけないが、タイトルが決まらずにいる。なかなかいいタイトルは見つからない。