2100年の生活学 by JUN IWASAKI : 2024.7.1

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2024.7.1

昨日、自転車がパンクしたので、修理へ持っていく。明日までに直しますとのことで45ユーロ。自転車を50ユーロの破格で購入していたので、まあ妥当な出費かもしれない。「安物買いの銭失い」まだもう一つのタイヤがパンクしても新品は買えない。
先週パリに行った時に、Euro 2024やFête de la Musiqueがそれほど盛り上がっていないという話をしていて、その背景にはフランス議会選挙があるからだと教えてもらった。Emmanuel Macronが賭けのような解散総選挙の決断を下した。昨日、第1回投票が行われ、Marine Le Penが率いる極右RNがEmmanuel Macron 率いる与党連合を抑えて第一勢力となる見通しとなった。RNは移民排斥や減税などに関する計画を掲げている。投票率は97年以来の高水準だったそうで、この選挙戦がどれだけ重要なものだということが伺えると各社ニュースは報道。Bruno曰く、極右が力を持つと、リベラルなパリでは反発のデモがかなり起きるのだが、今回はあまり起きていないから不気味だと話していた。流石に昨日はパリのRepublique広場でデモが起きたようである。RNは国民議会で過半数を確保し自由に活動できるようになるのか、それとも議会で分断が生じ、RNはほとんど何もできなくなるのか、来週の選挙結果次第で状況は異なってくるのだという。フランスやEUの政治と歴史の勉強不足のぼくにとってなかなか理解できない部分も多い。アメリカやイタリアなどに続くように、フランスという歴史的に見てもリベラルな国においてもRNのような極右政党が台頭するということは世界の流れも少し変わってきているということなのだろう。少し読んだところによると、RN党首であるJordan Bardellaは、若干28歳で労働者階級や失業者、地方の若年層から支持を受けている。どこの国も同じ構造ができている。ぼくは少なくともMacron 氏が多用していたと記憶している「アンガージュマン」、サルトルが提案したアンガージュマンの思考が好きなので、全てを知らないがMacron氏の意識の向け方は好きであった。自分が実践的に勇気を持って何ができるのか、どう社会にコミットできるのかということをぼくは自分の存在と共に考えたいと思っている。ぼくは人から利己的だと言われることはないものの、社会的な行動のない人間だと思われがちであるが、ぼくは全体を見て自分が何をするべきなのか、自分の視点から信念を持って考えて行動するのはとても好きである。世界の分断や自分たちの利己主義に目を向けるのではなく、平和と異文化への理解と新しいことへの挑戦ができる世界がこの世の中にあって欲しいと願う。
自転車修理から帰り、家に到着しフッと息をつきながら聖子ちゃんと話していると電話が鳴った。「終わったので取りに行きてくださいね」と自転車屋さんから電話があった。明日と言われていたことが1時間後に完成する、これがオランダではたびたび起きる。大体において早く完成するのだが、時に全く想像もつかないほど連絡が来ないこともある。しかし連絡すると、今日やりますねと言われる。まだオランダ人の性格が掴めていない。パンクだけではなく、ブレーキも、オイルも、そのほか細かいメンテナンスもうやっときましたよ、とのことで気前がいいというのは気持ちいいなと思った。
18時からEuro 2024フランスvsベルギー、21時からポルトガルvsスロベニアを観戦。2試合も見るつもりもなかったのだが、どちらの試合も面白く結局2試合とも観戦していた。どちらも熱量、試合前の差の付いた下馬評、キープレイヤーの存在など含め、いろんな側面から見ても良い試合だったが、特にポルトガルvsスロベニアはCristiano Ronaldoが監督主演の映画を見ているようだった。彼が驚くほど活躍しているわけではないし、全く直接的にボールに関与しないまでも奇妙なまでにおとなしい。現代フットボールの中では動きの少なさが顕著であり、それを肯定するか否定するかは見る人次第だろうが、隣でチラチラ見ていた聖子ちゃんでさえ、「ロナウと動かないね」と言っているほどであった。解説者もCristiano Ronaldoの話で持ちきりで、カメラも「I have loved you for 20 years, but not tonight」と書かれたTシャツを着た男性をズームアップし、フリーキックには最大限のエネルギーを注ぎ、壮大に外し、延長線に味方選手が獲得したPKを外し号泣し、PK戦では一番に蹴りに行ききちんと決め切る。チームの勝利に満足気な姿を見せる。利己的な選手なのか、それとも利己的に見えてしまうが、そのパワーこそがポルトガルという国をフットボール大国として成長させてきた歴史なのだろうか。チームメイトも文句はあるだろうが、文句を言わずにCristiano Ronaldoを活かすような、チーム作りに徹しているように見えた。憧れや敬意からくるものだろうか。あれを見せられるとフットボールというものがただの争い事ではなく、歴史と文化を持ったエンターテイメントして価値があるとしか言えないだろう。