2100年の生活学 by JUN IWASAKI : 2024.6.21

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2024.6.21

パリ、朝は雨だったが、結局昨日は4万歩ほど歩いて、自分の土地勘を取り戻すためにも朝から散歩したいと思っていたので、Mamicheでクロワッサンとパンオショコラを買う。これまでのパンオショコラを美味しいと言っていたことを恥じらいたくなるような、「そうそう、これなんだよ」と自分が作ったかのように人に自慢したくなるような味と香りと食感だった。そして、パリを離れて以来、ぼくは頻繁にクロワッサンではなくパンオショコラを注文していたが、これまでパンオショコラを注文していたことを恥じるような、自然と笑みが漏れるようなフランスのクロワッサンだった。パンオショコラを食べたが、クロワッサンが美味しすぎてチョコレートが邪魔だと感じたほどである。
家に一度帰り、Leaちゃんのお母さんと話し込む。ずっと気になっていたので、Leaちゃんのお母さんCarmellaにiphoneなどでメッセージやメールをする際にLeaの「e」の上にコンマが必要かという質問をした。「それを気にしてくれるのはとても優しいことね。大体本人も気にしないけど、私は自分の名前Carmellaのlが一つだったらそれはちょっとショックなのよ」と言っていた。昼はChez Bobでサンドウィッチを食べて、Nigelと合流し、散歩。Henri cartier bresson foundationでStephen Shoreの展示を一緒に見て、さらに散歩をして解散。彼から学ぶことはとても多い。街を見ることとはどういうことか、自分の仕事を続けるというのはどういうことなのかを教えてくれるようだった。夕方、Oliviaとカフェをして、最近のぼくの活動とか、ステラのトレーニングについて話す。犬は、人間になるわけではないのだから、もし人間の子供が大人になるのであれば社会で生きて行くために躾や教養が必要かもしれないが、10-14年たっても犬は犬なんだから、犬らしく生きさせるというのも犬にとってはいいんじゃないかという意見をくれて、少し心が楽になった。Oliviaと一緒に住んでいたのがもう11年前なので、ぼくがどんな風に成長してきたのかをよく知っている。「最近、決断できなくなって困ってるんだよね」というと、「昔から変わってない同じだよ」ずっと何事にも悩んでいると笑いながら言われた。Square du Templeのあたりで、
ジャスミンさんとマイケルくんに遭遇。街で撮影をしていた。Librairie Yvon Lambertに行き、Brunoと少し話をし、その後The Fête de la Musiqueなので通りすがりでいくつかのDJを観てBouillon Chartierで一人でディナー。21時からEuro オランダvsフランスもあるので、サクッと食べて近くのカフェで観戦しようと思っていた。初めてBouillon Chartierへ行ったので、一人で行くと早く入れるのと引き換えに誰かと相席になるとは知らず、すでに座っていた綺麗な黒髪で素直な笑顔をしたふくよかなメキシコ人の女性と相席で食事をした。お見合いも合コンもしたことはないが、「Hello! Would you mind to sit here?」から始まり、名前や自己紹介をし、まさにお見合いや合コンのようなそんな感じのものだった。オーダーも別々だし、ギャルソンもぼくたちをきちんと個別のグループとして接してくれるし、何も問題はないのだが、えらく小さいテーブルと二人でシェアする機会というのはなかなか現代社会を生きていると遭遇しない。その女性も初めて来たので、相席に困惑していたのか、初めは辿々しい姿を見せていたが、ぼくはこのまま気まずく食事をするのも嫌だなと思い、「どこから来たのか」とか「今日は何をしたのか」とか「この店にはよく来るのか」とか、基本的な一般的に誰もがするようなたわいもない質問をしてみた。彼女はメキシコシティのPhdの学生で、パリに二日間滞在後、セビージャへコンファレンスに参加するために行くのだという。昨晩24時間のフライトを経てパリに到着したのだそうだ。話しながら、女性が注文していたカラフェのサングリアをピッチャーでグラスに注がずにそのままビールジョッキのように飲んでいるのがどうも気になってしまい、「ここにグラスありますよ」と目の前に逆さに向けて置かれたままになっていた小ぶりなワイングラスを指差した。「パリは初めてだから」と恥ずかしそうにしながらエスカルゴを必死に食べる姿をみて、メキシコという国がひと懐っこい人たちがたくさんいる辛気臭さとは無縁の陽気を含んだ都市なのではないかと行ったことない土地を想像した。メキシコの食事や言語、それからスペインやアメリカに対して何を思っているのかと問いかけ、女性はぼくに今日何をしたかとか写真を交えて教えてくれた。気付けば二人でデートに来たかのように話が盛り上がっていた。「カナダもメキシコもみんな自分たちのことをアメリカと呼ぶのよ」と言っていて、ぼくの世界を見る角度が少しずれているような気もしたし、メキシコがなぜスペイン語を話すのか、現地の言葉はもうほとんど話せないということ、それから朝に食べるトルティーヤと昼に食べるものが違うことも、特に全ての墓が派手ではないことなど、自分がこれまで何も知らずにタコスを食べて生きていたことを少しくらいは恥ずべきと思った。女性が先にメインを食べ終わり、ぼくが食べ終わるのを待ってくれているような気配がし、気を遣ってくれて注文を遠慮しているような気がして、「デザートも食べるんですか?」と問いかけると、思い出したかのようにメニューに目をやっていた。さらに話しながらぼくがブッフ・ブルギニョンの最後の一口をを食べ終わった時に、女性が「Shall we order desert ?」と尋ねてきた。ぐいっと飲んだスパークリングウォーターを吹き出しそうになった。「ぼくたちは一緒に食事に来ていないのだから好きに食べてくださいね」という言葉が喉まできたが、出会った人間に対してあまり薄情になれないぼくはそれを押し殺し「yes, sure!」と答え、ぼくはフランを注文。女性はライスプディングを食べていた。フランを食べてから、ぼくはエスプレッソを注文し、女性はギャルソンに言われるがままに支払いを済ませた。「私もコーヒーが飲みたかったのに」と言い、ぼくのエスプレッソが届いた時に、「私もコーヒーください」というとギャルソンは「Too late」と言いながらもエスプレッソを運んできて、追加の1.3ユーロを請求した。女性はお砂糖の袋をあけ遠慮せずに1袋入れた、さらにカップの横についている雨の入った袋のようなものに入ったチョコレートらしきものをお砂糖だと思ったのか、そのままポンっと入れてしまった。さらにぼくの半分使ったお砂糖と、チョコレートらしきものも一気に入れてしまった。また笑ってしまったが、それはチョコレートだよとは言えなかった。「コーヒーは甘い方が好きなんですね」というと「コーヒーは甘くないと美味しくない」と言った。さらにミルクが欲しかったらしく、ギャルソンにミルクくださいと言っていたが、さらに「Too late」と言われていた。そのやりとりを横目にぼくは自分の支払いを済ませ、エスプレッソを流し込むようにし、女性に「コンファレンスの成功を願っています、残り少ないパリの時間楽しんでね」とだけ告げ先に席を立った。時計を見ると、もうすでにEuro 2024オランダvsフランスは後半が始まっている時間だった。Bouillon Chartierを出てすぐのGrands Boulevards沿いの混雑する大箱カフェのテラスの席にひと席の空席を見つけたので、座りスクリーンに目をやる。後半6分で、0-0であった。横の席に、映画『Anna』のAnna Karinaのような丸渕のメガネをかけてジャケットをきた若そうなブロンドヘアの女の子がいて少し話した。洋服が好きそうな雰囲気がある女の子だった。その後、渡邉さんとやありさんに会い、渡邉さんの家に行き、25時半に帰宅。