ダイニングテーブルのソリューションが見つからない、オランダのヤフオクとかメルカリとかと言われているmarktplaatを徘徊していると、2000mmx900mmの木のテーブルがたった€10で出品されていた。そのディスクリプションには「Some marks on the top、Removable legs」と書かれている。出品情報を見ると1月26日にサムが出品している、街のopショップの賑わいを見るとこんなテーブルがきっと1週間も売れることなく残っているとは思えない。ダメ元で、「まだこのテーブルは残っていますか?」とメッセージを送る。すぐにサムから「Yes, it is.」と返事が来た。天板を取り替えて使えばいいんじゃないかと聖子ちゃんと話す。足と天板の裏側の構造が気になったので、さらに写真を送ってもらう。ステンレスの金具でジョイント部分を繋ぎ合わせており、足の部分は、ボルトの着脱で設置可能である。これなら天板を変えても問題なさそうである。「持ってきてくれませんか?追加でガソリン代€10払いますので」さらにメッセージを送る。「車はあるけれどできない。トラムでも持って帰れない重さではないと思うよ」とサム。「じゃあ取りに行きます」「いつ来る?」「今すぐ行きます」「あと10分で家を出なきゃいけないから、家の外に置いておくよ。お金は、そうだね。ボトルのワインを代わりに置いて行ってくれたら、それでいいよ。Good Deal?」一瞬戸惑ったがあっちがそれでいいならこっちはその面白いのに乗るしかない「Yes, Good deal」と。「Good Luck guys!」と外に置かれたテーブルの写真が届く。
急いで上着を着て、軍手をポケットに捩じ込み、トラムに乗り込む。最寄りのトラムストップで肉体労働者っぽい二人の若者に声をかけられる。一人は、popeyeの編集者柳澤さんに風貌が似た好青年で、もう一人はとにかく背が高い。栄養が縦にしか行かなかったかのように細いが、とにかく高い。身長を聞くと「2」と言われる。2mということだろう、ラッキーなことにテーブルの長さと同じである。彼はしゃがむこともなくトラムの扉を問題なく通過して車内に乗り込んだ。サムの家は11番トラムの終点のビーチ近くにあった。デン・ハーグは、ビーチに近い街ではあるが、縦に長いので、どのビーチも表情が少しずつ違う。ここの夏はものすごい人なんだろうと予想されるような手の入った景観で、どこか鎌倉由比ヶ浜のビーチを思い出させた。サムの家の前に立てかけられたテーブルを無事に確認しゲットするも、かなり重い。サムがどのくらいの大男なのかはわからないが、二人で天板と足を4脚も持って帰るのは不可能に感じた。途方に暮れそうになっていたので、「トラムストップまでまず脚を運んで、そのあと天板を運ぼう」多分ぼくが言ったのだろうが、これが全ての悪夢の始まりであった。いや、悪夢はワインボトルとのディールの時点で始まっていたのかもしれない。赤ワイン、キリスト教においてそれは「神の怒り」や、「神罰」の象徴でもある。
とにかく、まず4脚の脚をトラムストップまで運び、そのあと天板を運ぶ。トラムストップからサムの家までは、徒歩5分ほどの距離なのだが、天板は長辺が2mもあり横は90cmもあるのだから、この車通りの少ない夏向きなビーチタウンでもそれでも持ち運ぶのは一苦労である。一つの大きな上り坂を越えなければいけない。5回ほどの休憩を挟み、なんとかトラムストップに到着。同時に、タイミングよくトラムが来たので、扉のボタンを押し扉を開けて乗り込む。ラッキーだったのは、このストップが始発だったことで、誰も乗客はいない。板を乗せ、ぼくが支えている間に聖子ちゃんが脚をベンチまで取りに行き乗せる。脚も4本を一回で運び込むことはできないほどのズドンと重みのあるものだ。他の乗客も乗り込んできた。すると、長い顎鬚に黒いサングラスを頭に乗せたカリブ海のオランダ領出身らしい体型でいかにもWBCのオランダ代表といった見た目の乗務員が寄ってきて「それはトラムに載せられないよ、トラムは人のためだから。小さい椅子とかならいいけれど、そんな大きいものはダメ」「でも、ぼくたち車もないんです。10分でおりますから」「ノー、ダメなんだ、降りてください」と言っているとトラムが出発してしまった。聖子ちゃんも必死で4脚の脚をトラムの椅子に置くような抱えるような体勢をしながら、「降りますから、ちょっと待って。でも例えば脚だけならいいの?」と力が入っているからかあまり見ることのない必死な形相で食い気味に意味のわからない質問をした。それに返事もせず、長い顎鬚にサングラスのWBCオランダ代表の乗務員は、怒ったように先行車両に歩いて行った。とにかくダメなのだろう、そんな言い合いをしていると隣のトラムストップに着いたので、火事場の馬鹿力が働きなんとか一人で天板を降ろす。あの「2」と言ってきた彼は本当に2mだったのだろうか、今では彼が1.80mくらいしかなかったのではないかと思えるほどトラムの扉は小さい。なんとか必死で天板を降ろし終えると、隣の扉で聖子ちゃんが格闘している。なんと脚を2脚降ろして、扉が閉まってしまったのである。中からおばさんが必死でボタンを押してくれているが祈りどころか何も効果なく、脚を2脚乗せたトラムは非常にも発車してしまった。「神の怒りである」そこには、床をずってしまって少し角が折れた2mのテーブルの天板と、二脚の脚と疲労感と絶望感とで膨れ上がって声も出ないぼくら二人だけが残された。運びこんだ満足感を感じる間も無く、焦りと疲労と最後には絶望が襲ってきた。テーブルは脚が4脚ないとただの思いだけの木材に見えてくる。さらに気付いたのがだ、脚を止めるボルトはトラムに残された2脚にガムテープで接着されているので、手元にはない。二人とも声が出ず、グレーの寒空の元呆然と何をするでもなく柱にもたれかかった。少し冷静になった頃に「もしかするとボタンを押してくれていたおばさんが気を利かせて、次の駅で外に放り投げて置いてくれるんじゃないか」と思い、天板と脚が2脚しかないテーブルは誰かに取られることもないだろうとその場に放置し、隣のトラムストップまで歩いてみることにする。まあ、もちろんあるわけがない。Lost&Foundに電話するも、「月曜日にwebに全て載せるのでチェックしてください」と。テーブルのあるトラムストップに戻る。「私ロンドンでLost&Foundで2回も財布出てきたから信じるしかないかも」と聖子ちゃんが言い出した。その言葉を信じて、Uber Vanで、帰ることにする。Uber Vanは20分ほどかかるとのことだった。この脚が二脚しかないテーブルを放置するわけにも行かないし、それ以外にはもう選択肢はなかった。その頃には、そのトラムが木を載せてまた戻ってくるんじゃないかと淡い期待を抱けるほどの精神状態にあったので、調べてみると11番は、Den Haag Centraalとビーチを往復するトラムで、片道25分だった。さて、どうしようと思っているうちに空は暗くなり、海沿いのエリア独特のたっぷりと湿度を含んだしっとりとした空気が時間と共に霧の風景を作り始めた。薄暗く白くなる風景の中に光る車の光がなんとなく自分たちがいかにこの街にフィットしていないかを伝えているようだった。Uber Vanを待っている間反対車線に来たトラムを覗き込むも、何も見つからない。またもう一本、もう一本、どれにもテーブルの脚は見当たらない。もう既にここで40分ほど過ごしていた、スケジュール通りに動いているのであれば、次のトラムじゃないかとなと待っていた。もう街は真っ暗である。晴れた日の夜はかなり冷える。ステラも家で留守番している。暗い時間の留守番には慣れていないので少し心細くなってくる時間だろう。Uber Vanはあと3分でくる。ちょうど反対車線にトラムが来た。最後の一台、もうこれで終わりだ、こんな都合のいいことはあるわけないよなと思いながら、車内を覗き込むも忘れた場所にはない。「諦めよう」と聖子ちゃんに言ったら、トラムから長い顎鬚にサングラスのWBCオランダ代表風の乗務員と背が高く髪の長いランディジョンソンのような男性が木の脚を2脚抱えて降りてきた。「we are looking for you」ちょうどUber Vanも到着し、テーブルを担ぎ込んだ。Uber Vanの中で、二人で「こんな映画みたいな話ある?、小説でも書く?」「映画っぽいから面白いだけで、映画になると映画っぽすぎて面白くもないよ」などと言いながら涙が出るほど大笑いした。赤ワインは、キリスト教においては「喜びや歓喜のイメージ」でもあるのだ。
急いで上着を着て、軍手をポケットに捩じ込み、トラムに乗り込む。最寄りのトラムストップで肉体労働者っぽい二人の若者に声をかけられる。一人は、popeyeの編集者柳澤さんに風貌が似た好青年で、もう一人はとにかく背が高い。栄養が縦にしか行かなかったかのように細いが、とにかく高い。身長を聞くと「2」と言われる。2mということだろう、ラッキーなことにテーブルの長さと同じである。彼はしゃがむこともなくトラムの扉を問題なく通過して車内に乗り込んだ。サムの家は11番トラムの終点のビーチ近くにあった。デン・ハーグは、ビーチに近い街ではあるが、縦に長いので、どのビーチも表情が少しずつ違う。ここの夏はものすごい人なんだろうと予想されるような手の入った景観で、どこか鎌倉由比ヶ浜のビーチを思い出させた。サムの家の前に立てかけられたテーブルを無事に確認しゲットするも、かなり重い。サムがどのくらいの大男なのかはわからないが、二人で天板と足を4脚も持って帰るのは不可能に感じた。途方に暮れそうになっていたので、「トラムストップまでまず脚を運んで、そのあと天板を運ぼう」多分ぼくが言ったのだろうが、これが全ての悪夢の始まりであった。いや、悪夢はワインボトルとのディールの時点で始まっていたのかもしれない。赤ワイン、キリスト教においてそれは「神の怒り」や、「神罰」の象徴でもある。
とにかく、まず4脚の脚をトラムストップまで運び、そのあと天板を運ぶ。トラムストップからサムの家までは、徒歩5分ほどの距離なのだが、天板は長辺が2mもあり横は90cmもあるのだから、この車通りの少ない夏向きなビーチタウンでもそれでも持ち運ぶのは一苦労である。一つの大きな上り坂を越えなければいけない。5回ほどの休憩を挟み、なんとかトラムストップに到着。同時に、タイミングよくトラムが来たので、扉のボタンを押し扉を開けて乗り込む。ラッキーだったのは、このストップが始発だったことで、誰も乗客はいない。板を乗せ、ぼくが支えている間に聖子ちゃんが脚をベンチまで取りに行き乗せる。脚も4本を一回で運び込むことはできないほどのズドンと重みのあるものだ。他の乗客も乗り込んできた。すると、長い顎鬚に黒いサングラスを頭に乗せたカリブ海のオランダ領出身らしい体型でいかにもWBCのオランダ代表といった見た目の乗務員が寄ってきて「それはトラムに載せられないよ、トラムは人のためだから。小さい椅子とかならいいけれど、そんな大きいものはダメ」「でも、ぼくたち車もないんです。10分でおりますから」「ノー、ダメなんだ、降りてください」と言っているとトラムが出発してしまった。聖子ちゃんも必死で4脚の脚をトラムの椅子に置くような抱えるような体勢をしながら、「降りますから、ちょっと待って。でも例えば脚だけならいいの?」と力が入っているからかあまり見ることのない必死な形相で食い気味に意味のわからない質問をした。それに返事もせず、長い顎鬚にサングラスのWBCオランダ代表の乗務員は、怒ったように先行車両に歩いて行った。とにかくダメなのだろう、そんな言い合いをしていると隣のトラムストップに着いたので、火事場の馬鹿力が働きなんとか一人で天板を降ろす。あの「2」と言ってきた彼は本当に2mだったのだろうか、今では彼が1.80mくらいしかなかったのではないかと思えるほどトラムの扉は小さい。なんとか必死で天板を降ろし終えると、隣の扉で聖子ちゃんが格闘している。なんと脚を2脚降ろして、扉が閉まってしまったのである。中からおばさんが必死でボタンを押してくれているが祈りどころか何も効果なく、脚を2脚乗せたトラムは非常にも発車してしまった。「神の怒りである」そこには、床をずってしまって少し角が折れた2mのテーブルの天板と、二脚の脚と疲労感と絶望感とで膨れ上がって声も出ないぼくら二人だけが残された。運びこんだ満足感を感じる間も無く、焦りと疲労と最後には絶望が襲ってきた。テーブルは脚が4脚ないとただの思いだけの木材に見えてくる。さらに気付いたのがだ、脚を止めるボルトはトラムに残された2脚にガムテープで接着されているので、手元にはない。二人とも声が出ず、グレーの寒空の元呆然と何をするでもなく柱にもたれかかった。少し冷静になった頃に「もしかするとボタンを押してくれていたおばさんが気を利かせて、次の駅で外に放り投げて置いてくれるんじゃないか」と思い、天板と脚が2脚しかないテーブルは誰かに取られることもないだろうとその場に放置し、隣のトラムストップまで歩いてみることにする。まあ、もちろんあるわけがない。Lost&Foundに電話するも、「月曜日にwebに全て載せるのでチェックしてください」と。テーブルのあるトラムストップに戻る。「私ロンドンでLost&Foundで2回も財布出てきたから信じるしかないかも」と聖子ちゃんが言い出した。その言葉を信じて、Uber Vanで、帰ることにする。Uber Vanは20分ほどかかるとのことだった。この脚が二脚しかないテーブルを放置するわけにも行かないし、それ以外にはもう選択肢はなかった。その頃には、そのトラムが木を載せてまた戻ってくるんじゃないかと淡い期待を抱けるほどの精神状態にあったので、調べてみると11番は、Den Haag Centraalとビーチを往復するトラムで、片道25分だった。さて、どうしようと思っているうちに空は暗くなり、海沿いのエリア独特のたっぷりと湿度を含んだしっとりとした空気が時間と共に霧の風景を作り始めた。薄暗く白くなる風景の中に光る車の光がなんとなく自分たちがいかにこの街にフィットしていないかを伝えているようだった。Uber Vanを待っている間反対車線に来たトラムを覗き込むも、何も見つからない。またもう一本、もう一本、どれにもテーブルの脚は見当たらない。もう既にここで40分ほど過ごしていた、スケジュール通りに動いているのであれば、次のトラムじゃないかとなと待っていた。もう街は真っ暗である。晴れた日の夜はかなり冷える。ステラも家で留守番している。暗い時間の留守番には慣れていないので少し心細くなってくる時間だろう。Uber Vanはあと3分でくる。ちょうど反対車線にトラムが来た。最後の一台、もうこれで終わりだ、こんな都合のいいことはあるわけないよなと思いながら、車内を覗き込むも忘れた場所にはない。「諦めよう」と聖子ちゃんに言ったら、トラムから長い顎鬚にサングラスのWBCオランダ代表風の乗務員と背が高く髪の長いランディジョンソンのような男性が木の脚を2脚抱えて降りてきた。「we are looking for you」ちょうどUber Vanも到着し、テーブルを担ぎ込んだ。Uber Vanの中で、二人で「こんな映画みたいな話ある?、小説でも書く?」「映画っぽいから面白いだけで、映画になると映画っぽすぎて面白くもないよ」などと言いながら涙が出るほど大笑いした。赤ワインは、キリスト教においては「喜びや歓喜のイメージ」でもあるのだ。