2100年の生活学 by JUN IWASAKI : 2024.1.4

Translate

2024.1.4

午前中、ステラの面談があったので、アムステルダムイーストのあたりまで散歩。
ドッグトレーニングをしているイスラエル人の男性と会う。彼の名は、Shukiという。彼の前ではステラはとてもおとなしくしていた。彼自身もとても落ち着いた雰囲気のある方で、ドタバタとした印象はなく、知識や勤勉に裏つけされた自信にみなぎった謙虚な方だった。
少しの間、オランダを離れるのでその時間を利用してトレーニングをお願いしたいです。引っ張り癖があるのと、鳥や猫を見つけると追いかける習性が抜けない、家での留守番ができないことがある、という3つの問題を伝えていた。「初見だけれど、今の所全然エクストリームじゃないので、これくらいならすぐにトレーニングでなんとかなると思う」とのことだった。「彼女がエクストリームではない、そういう風に言ってくれると安心します」とぼくは言った。実際、彼には犬だけではなく人を安心させるような風格が備わっている。犬だけではなく、動物一般的にそうかもしれないと思わされる。ここのところ、自分たちの生活を整えるので手一杯で、ステラのわがままに耐えられなくなってきたので、少しの間、ボーディングスクールのようにトレーニングさせようかと考えている。金銭的なことを言うと今のぼくたちにははっきり言ってものすごく高いのだが、ステラとぼくたちお互いの今後のことを考えると、いい加減決断しトレーニングに励むべきなのだ。お互いに不安を感じているような状況ではなかなかうまく行くものもそうはいかないだろう。
しかし、ユーロが高いこともあるが、そもそものオランダの物価がものすごく高いので、現状を打破しないとこのままでは貯金してきたお金が空っぽになってしまう。お金が減ることの心配をするくらいなら、今あるお金をいかにして増やすか、その方法を考えるしかないという話をしながら、通りかかったベーカリーカフェBakhuys Amsterdamで一服。ひたすらにぼくたちが何をできるのかと言うことについて話す。お金の心配をしていても腹は減るし、エスプレッソは飲みたくなるのだ。歩きながら話すのは、自分の思考にとっても心の健康のためにもと良いとつくづく思う。東京に引っ越して以来あまりこうやって二人で目的もなく歩くことがなくなっていた。別にいい家に住んでいないとしても、目的もなく街を散歩していると、そこは自分の家にいるかのように喜びの気持ちで包まれることもある。何より心も身体もすっきりとしてくるのである。雨が降り続くこの街でずっと部屋の中にこもって何かをすると言うのは、今のぼくたちには本当に健康的ではなく、雨が続いているとやる気からも気力からも背骨が抜かれ、ぼくの気力はお盆に食べる骨が抜かれた直後の鮎のようにぐにゃぐにゃになっている。
さらに、イーストエリアを散策し、De PijpにあるオーガニックグローサリーDe Aanzetでハーブメディスンを買う。オランダに来てから、鼻詰まりがひどいのだ。そのことを50歳くらいのふくよかな体型の女性に話すと、「鼻が閉じているのか、もしくはアレルギーなのか」と聞かれる。「鼻が閉じている」というと鼻の穴を開く塗り薬をお勧めされるが、ハーブメディスンが良かったので、「他にないのか、身体に入れるようなものがいい」と尋ねるとさらにまだまだ出てきた。ああだこうだと話していると、女性は饒舌になり始めた。数年前からオランダ政府の政策で、冬は家から熱が逃げないように、夏は外気が中に入らないように、壁を二重にしている。箱の中に箱があるような状態に作り替えているのだそうだ。ここのところずっと耳から血が出るほどに家を探していたのでよくわかるが、全ての物件にエナジーレベルというのがAからGまで記載されている。壁は二重になっているか、オール電化か、などの条件からエナジーレベルをチェックしているようだ。もちろんエナジーレベルが高いとその分電気代は安くなるので、何も知らずに家を探している時はAからCで探していた。今日話を聞くと、そのせいで中と外の温度差が激しく身体が順応できない人が多く、問題となっているのだという。エナジーレベルAにはいいことばかりではないということに気付かされる。お金が安くなりますよという謳い文句は、いつも警戒するのだが、まさかこの合理的で何事にもアドバンスで正義を持って進んでいく国において、そのような問題があるとは思っていなかった。
さらに彼女は「昔はオランダは海が近くて魚をたくさん食べていたから、オメガ3も充分に摂取できていたが、もうオランダは海に近くないので、、、」などと言っていたが、ぼくからするとオランダは海に面しているように思うのだが、否定せずに話を聞いていた。埋め立てによる漁業の現象とかそういう話だろう。この女性が、社会問題と身体の関係性や影響を明確に語っている姿はなんとなく興味深かった。Van Gogh Museumを抜け、Vondel Parkを通り抜けて帰る。今日は聖子ちゃんととにかく話し続ける。家に帰り、レジデンツパーミットの手続きを進め、夜はイタリアのリサーチ。本当にイタリアに行けるのだろうか。夜中、寝れないのでソファに座りInstagramを見ていたら、坂田焼菓子店の坂田さんが、2007年の新聞の切り抜きというものをポストしていた。その新聞の見出しには「落ち込まない最善の治療法は前進」と書かれていた。自分に向けられた言葉のように感じた。今日1日の会話のまとめのような言葉。