2100年の生活学 by JUN IWASAKI : 2024.1.14

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2024.1.14

朝、7時に起きて散歩へ。

Hotel Palazzo Guadagniに11時に荷物を預けにきたら、チェックインができるということだったので、そのままチェックイン。Hotel Palazzo Guadagniは、1505年に建てられたルネッサンス建築Palazzo Guadagniの中にある。メディチ家の持ち物だったBoboli Gardenのすぐそばで生活のあるエリア。ホテルの前の広場で、サンデーマーケットが開催されていた。

フィレンツェを歩いていると、生活者の顔が見えないというふうに昨日は書いたが、川の南側は、割と生活している様子が見える。Uffizi Galleryを観て、街を歩き回る。曜日感覚がほとんどないのだが、日曜日なんだろうなと思わせられるようなイタリア人家族をたくさん見かける。夜は、ホテルの近くのワインバーEnoteca Pitti Gola e Cantinaへ。ワインセラーのなかに小さな食事スペースを作ったようなお店で、心が揺さぶられた。ぼくの心の棚は、今の所に移転する前のLibrairie Yvon Lambertのグレーの本棚なのであるが、ここの深い緑の棚もあの棚を何故か思い出させるような、印象を持っている。ウィンドウに貼られたカッティングシートが、本にする箔押しのようにガラスを削って文字を書いているように見えた。レザーのエンボスも、緑のワインの棚も、金具は使わずに木だけで作られている。伊勢神宮のようである。棚には、1970年のラベルのついた空のワインや、鉱石や大理石などがスペースを埋めている。それがあまりやらしくなくエレガントなのだ。天井高は5mほどあるのだろうかと思うほどに高く、また、ここもボルティコの天上のように、アーチ状になっている。天井は大体色がはげ落ちているのだが、そこはオリジナルカラーなのだろうかといつも思うがなんとなく聞かずに店を立ち去っている。気品に加えた鋭い美的感覚があり、ほんの少しの上質なもので満たされた間を感じる空間。だからと言ってスノッブでもポッシュでもアングロサクソナイズドされたようなものでは全くない。空間というと、インテリアとか建築的な印象を与えるが決してそうではなく、サービスやそこにある雰囲気も含めて、空間と呼びたい。「量より質」ぼくが常に思い描く理想の姿をまた確認させられるようだった。ニュージランドのクライストチャーチのCanterbury Cheesemongersのお店のプレゼンテーションやその後真冬の公園で食べたサンドウィッチのように鋭く気品があるものを作れるようになりたい。フィリップ・マーロウのオフィスだってそうだし、ジム・ジャームッシュ『Permanent Vacation』のクリス・パーカーの部屋もそうだろう。上質なものがそこに少しあるだけ。「上質とは何か」ぼくなりにしっかりと考えて、それはまた今度書いてみたいと思う。