2100年の生活学 by JUN IWASAKI : 2019.9.1

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2019.9.1

今日から9月。ある友人から今朝はなんだか空気に秋を感じますとメッセージが入っていたが、世田谷区にあるぼくの部屋にはまだ秋は忍び込んでいないようである。着ていたティシャツはしっかりと湿っており、脇もやんわりとではあるが、汗ばんでいる。
朝、昨晩の洗い物があり、一安心。昨晩に想いを馳せながら洗い物をする。このひと時がぼくにとっては至福の時間となる。ある人は毎週日曜日9時になれば教会へ行き、賛美歌を歌い、イエスキリストの言葉を聞く、ミサを受けることで心を落ち着かせる。ある人は、8時38分の渋谷行き各駅停車の中で、iPhoneのアプリを使って前日になにがあったのか日記を書くことで、心を穏やかにさせる。
人には色々なモーメントがあり、どのように心を落ち着かせているかは人の数だけ存在している。僕の場合は、夜に人をうちに招き、ディナーを共にした次の日の朝、昨晩の食器の洗い物をしている時こそがそれなのである。

9時過ぎに家を出て、向かうは水戸芸術館で開催中の大竹伸朗『ビル景』。青春18切符がまだ3回残っているので、使う。あと2回分、使うか売るか。売れば少しはお金が帰ってくるはずである。ヤフオクをみるとまだ買っている人はいるようだし、8月31日の販売終了日を過ぎた今日は欲しくても買えない訳だから、理屈だけで考えると喉から手が出るほど欲しいものになっているに違いない。その話は、おいておいて、水戸芸術館に向かう。
昨晩の残り物をパンに挟み、Clean Kanteenのウォーターボトルに部屋に備え付けているウォーターサーバーから水を淹れる。特に冷やしているわけでも、お湯が出るというわけでもないのだが。地震が来た時の備えとしてなのか、ただ単にウォーターサーバーのある家に憧れていたのか、常備用として置いておくと便利だと思ったのか、理由は曖昧で同時にかなりはっきり明確である。
田園都市線で渋谷に出て、JR山手線に乗り換える。そこで青春18切符に新しい日付の入った新しいスタンプが押される。あと、2回になった。
JR山手線で、日暮里まで行く。日暮里で常磐線に乗り換える。「初めて常磐線に乗る」と思ったのだが、次の停車駅が三河島で、よく考えればちゃっぴが住んでいるのは三河島だった。
ということは、ぼくの常磐線バージンは、もう既に無意識のうちに喪失していたことになる。
気を新たに、土浦に向かう。村上春樹氏『1Q84』読み進める。Book1の後編。先日、静岡市駅近くのホテルに泊まった時に近くに大きなBook offを見つけ入ると、1Q84が全巻100円で並んでいたので即買い。ぼくは100円でしか文庫本を買わないようにしている。

水戸へ到着したのが12時半過ぎ。意外と大きな駅で少し驚くが、水戸市はサッカーチームもあるくらいだからまあ当たり前といえば当たり前かもしれない。北口から出て、歩いて水戸芸術館へ向かう。日曜日のせいで、閑散としている。商店街らしきところもあるし、城下町だったのだろうか、割と道もグリッド状に整備されている。どこか、盛りのない松本市といったような印象を受ける。

大竹伸朗氏の作品のパワー、多作さと大小問わない彼の制作意欲。ゆらゆらと目には見えないが確実に存在するバイブスを感じる。
Kenくんにメッセージすると、「ビジュアルの強さって重要やな〜」とメッセージが帰ってきたがまさにそうだと思う。
圧巻。創作意欲のみが刺激される。物販も欲望にまみれていれば間違いなく買ってしまうほどのものばかり。図録さえも買わず。買えず。
その後、日立駅へ行き、妹島さんの建築を堪能。驚くほど気持ちのいい建築。同じトーンの海と空の曖昧さの中に力強く存在する、ブレずにまっすぐな境界線。頑なまでの直線に憧れを抱いている。ぼくはずっと境界線が好きである。
日立駅周辺を散策し、リサーチして来ていた周辺の妹島建築をもう少し楽しみたいと思ったが、見つからず。パチンコ屋などの建築をしているのだという。立て替えされている模様。妹島さんは日立出身、ぼくはこういうプロジェクトが好きである。世界的な建築家が、自分が生まれ育った土地に何かを還元する。建築家の仕事とは人のためであるべきだ。
お昼を持ってきたサンドウィッチで済ましていたので、めちゃくちゃ腹が減り、駅前にあったイトーヨーカドーでトロの巻き寿司を買って、帰路につく。The Beatlesの何かがかかっていたような記憶があるが、その記憶さえ曖昧なほどに不思議な街であった。とにかく、妹島建築の日立駅と、海が美しい街。夕暮れ時に行ったので、駅前の開放感が、他の時間よりも感じられたのかなと思う。夕暮れ時は、空気を軽くし、夜に備える。そんな感覚を受ける。
21時半頃渋谷に到着。3時間くらいだろうか、ずっと座っていたし、村上春樹『1Q84』Book1後編を読み進める。こうやってずっと座っていなければいけない状況というのもなかなかないので、心地よい。もちろん、日暮里に到着して、JR山手線に乗り換えようとした時に、腰と足が痛くなったのは周知の通り。