2100年の生活学 by JUN IWASAKI : 2022.8.16

Translate

2022.8.16

 数日前にモレスキンのノートを買った。名前を入れた。というのも、実家に帰った際に、家に昔使っていた数冊のモレスキンを見つけ、中を開きペラペラとめくっていると、その時の質感や思考や悶々とした日々がその立体感を持って目の前に立ち上がってくるような感覚があったのである。思考のアウトプットの方法はたくさんあれど、ぼくの中では言語化するというのは非常に大切で、こうやって日記を書くことも、写真を撮ることと同様にノートにランダムな言葉を書き記すということによって
記憶の中にある思考というのは、ある何かフックによってブワッとまるで蒸し器の蓋を開けた瞬間のように勢いよく立ち上がるものだとぼくは感じているので、そのフックがあればあるほどぼくたちの記憶の中にある思考というのは何度も何度も立ち上がるのである。
それに、モレスキンをポケットに持ち歩いていた頃の方が考えるということに対してもう少し繊細だったのだなと感じたのも、今回ノートをまた買った一つの大きな理由である。
夜は、Mubiでシンシア・ベート監督『CYCLING THE FRAME』を鑑賞。おおおおっと思わされる映画で、2度観てしまった。主役のティルダ・スウィントンがベルリンの壁をなぞるように自転車でサイクリングするという1988年のショートムービー。ある種、ポエトリーのような印象を受ける作品で、歴史的な地域や湖、巨大なコンクリートのアパートメントコンプレックス、ランドスケープ、そして最後にグラフィティで描かれたベルリンの壁が、自転車で颯爽をサイクリングするティルダ・スウィンストンと共に描かれる。魅力的すぎる歴史と政治性を持ったドキュメンタリーのような作品で、これが自分の作品だったら幸せだろうなと思うほどである。その後、ジェームス・マーシュ監督『MAN ON WIRE』。9.11で破壊されてしまったニューヨークの世界貿易センタービルの2棟の屋上を綱のロープで結び、高さ約400メートルの空中で綱渡りを敢行したフィリップ・プティのドキュメンタリー。ぼくはこんな風に生きれたらと思っていた頃があるなと思い出すような映画。なぜか、ジム・ジャームッシュ監督『Permanent Vacation』を思い出した。共通するのは、最低限のものだけをもち、他に依存しないで人の振る舞いとその生き様だけで人を驚かせたり興奮させたりしていることだろうか。音楽がとても印象的で、とにかく映像とめちゃくちゃハマっていて心地よい。音楽は、マイケル・ナイマン。