2100年の生活学 by JUN IWASAKI : 2019.10.1

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2019.10.1

いいものを経験すると生活の質が変わる。
「その人がその人らしく鋭く生活をしていると、椅子もコップもティーポットも、昨晩絞られたまま机に寝ているレモンも朝食で食べたトーストの食べかすでさえもがかっこよくそこにいるんだ。」
自分で選択したものごとで溢れさせることがすごく重要なんだ。それこそが、全てのものに命を宿らせることだ。雰囲気を持った人間になる。
「マルセル・ブロイヤーのチェスカチェアーに座る人間になりたいんじゃなくって、道で拾ってきた廃材に座ることで(使うことで)それに何か新しい価値観をつけて雰囲気を与えられる人になりたいんだ。」

昼過ぎから中学時代からの後輩今中義貴くん(いまちゅう)と葉山に行く。
健寿司へ行き、1.5人前を食らう。どこから来たのだという話になり、生まれ育ちは関西だけれど、今は世田谷区に住んでいるなどという話をしていると、店主が喜んだように、ここから環八までどのくらいでいけるか?という話をしてきた。お客さんの中では競い合いがあるらしく最速16分ということだった。あり得ないと思う。
いまちゅうは9月に夏休みを取り、北海道に行き、MEMU EARTH HOTELに泊まったらしい。サラブレッドの生産牧場であった「大樹ファーム」のトレーニングセンター跡地に、2011年、寒冷地実験住宅施設「メムメドウズ」が完成する。隈研吾氏や伊東豊雄氏など日本を代表する建築家の実験住宅が点在する建築の聖地に、施設内の実験住宅や牧場の記憶を継承するリノベーション建築をホテルへコンバージョンする形でMEMU EARTH HOTELが誕生する。先進的な建築と十勝の無垢なる自然を原体験として楽しむためのホテルとしてサービスの提供と、”資源再読”をテーマにスタートした。
そんなコンセプトの中で、期待をして十勝まで足を運んだのだけれど、ある朝、朝食を食べるスペースで、レコードプレイヤーから音楽が流れていた。非現実な大自然の中での滞在から、音楽のリアリティの欠如により、一気に現実に戻されたのだ。オーケストラ演奏によるジブリ音楽、そんなにリアリティのない音楽が流れていたのだ。いや、流れていたのではない、人の手によって流されていたのだ。
その日の朝の気分でも、そこで働く彼ら個々人趣味でもなく、とにかくその場の音楽のリアリティの欠如に愕然とし、一気に現実に戻されるような感覚があった。
神奈川県立美術館葉山館へ行き、カイ・フランク展を鑑賞。気になる言葉があり抜粋。
「硬い丸パンの中にバターを入れて畑に赴き、それを食べるとパンもバターもない」そんな簡素さをカイフランクは目指していたのだという。ぼくは、まさにその簡素さに憧れと目標を持っている。
遠藤新建築事務所が施工した加地亭に行く。中は観れないものの雰囲気は、十分に、気になる存在としてそこに
環八まで16分だとか言っていたが、やっぱり16分なんてあり得た数字ではない、40分はかかるのだ。
フォート上野でフィルムをピックアップし、渋谷から田園都市線に乗り、帰宅。